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2018年11月16日金曜日

弓道の的中(射技)の物理的考察~中りに重要なのは押し手ではないのか~

20.中りに重要なのは押し手ではないのか?

既成概念では中りに重要なのは押し手です。
確かに矢の方向を定めるのは押し手です。ただそれだけのことです。
離れ(弦を放つ)という現象を起こすのは、押し手ではなく勝手です。これは否定する余地のない事実です。最終的に矢の方向を支配するのは勝手の離れ方になる。これは否定のしようがまったく無いのです。

<仮説11>
中りに重要なのは押し手ではないのか?

<検証>
中りには押し手が重要。間違いではありません。
なぜなら、会の状態では押しの肩から先は矢束の半分以上を占め、レバー比では矢の方向を支配していることになるからです。
したがって、押しがブレれば当然狙いがズレて中らないのは当たり前です。

しかし、もう少し考えてみましょう。

押し手は常に自分から見えています。
的付けは、常時自分の監視下にあると言っても良いわけです。最近は剛弓を引くわけでもないので、弓の反動もさほど強くはありません。こんな状況で、どんな押し手であっても、押し手がそうそう簡単にブレることはないのです。

一方、勝手は自分からは見ることができないわけです。
自分の勝手がどんな様子で離れているのかも全くわからないのです。しかも、アーチェリーのように顎に固定するわけでもなく、三次元的にフリーな状態で、不確かなほおづけだけが頼りになるだけなのですから、カオス状態になってしまいます。

さらに、離れは勝手から弦を外して矢を放つ現象そのものなのですから、勝手をコントロールする方法を細かく教えてもらえないことは、何かおかしいわけです。(卓球やテニスに例えるとストロークの方法を教えてもらえないようなものでは?)
したがって、物理的に、中りに最も重要なのは勝手をコントロールすることだということになるのです。的中に対する影響度を表せばこうなります。

押し手の手の内<勝手の手の内

弓道では、「中りは押し手」という既成概念があり、勝手のことはあまり詳しくは教えてはもらえない。そして、放置状態に近い。鍛錬せよという抽象的な言葉でうやむやにするのが当たり前のようになっているように感じます。
これは、あえて中りを指導せず的中にこだわることを中て射と言って忌み嫌うことで、弓道全体の深みを演出しているようなきらいがあるようにも感じることがあります。正射必中と言うなら、正しい状態を定義し、中りと真摯に向き合い、追求することも大事だと思うのです。


<まとめ>
的中に最も重要なのは勝手です。
どんなに綺麗な射形であっても、物理的に離れを起こすのは勝手ですから、勝手をうまくコントロール出来ていなければ中りません。私達は見えているものだけに心を奪われてしまいます。的中の的は見えない勝手とその後ろにあるのです。見えない的に中る離れを目指しましょう。


射形が綺麗なのに、勝手の手の内が整っていなくて中りが出せない人を多く見かけます。もったいないと思います。

勝手を整えること、これは少し難しい治療になります。
今までの引き方を変えるので、すぐには慣れないし。すぐに中りが出るようになるわけでもないでしょう。

自転車で補助輪を外して乗れるようになる時のような感じ、を思い浮かべると良いでしょう。

自転車の姿勢をコントロールする感覚を覚えるまでは、何度もこけて、自分は乗れるようにはならないのではないかと思えてしまいます。でも、一度自転車に乗れるようになれば、ずっと乗れなくなることは無くなります。まさにこのようなことなのです。


私見ですが、手を開いて(緩めて)離す人が多くなるのは、ゴム弓による練習の弊害ではないかと考えています。取り懸けを解く離れが練習・体感できるものがあれば、随分と変わるのではと思います。


次回は、会では見えない動作がある?を予定します。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。

がんばれ!


弓道の的中(射技)の物理的考察
もくじ

0.弓道の再開


1.はじめに
2.的中のための取り懸けについて(三つガケの場合)
3.的中について
4.離れについて
5.手を開いて(緩めて)離すことの弊害について(的中、上達を妨げるもの)
6.詰め合いについて
7ー1.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー2.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー3.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー4.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
8.伸び合いについて
9.会のままの残身について
10.会での勝手の手の内を考える

11.取り懸けの親指と中指のクロスをどう解くか
12.取り懸けで親指を押える位置は?
13.押し手の手の内を作るとき、角見の皮を巻き込む?
14.「離す」と「離れる」はどう違う?
15.胸弦の活用
16.弓道の離れとアーチェリーのリリースとの比較
17.正射必中に必要な幾何学的な必須条件
18.細かい話にはなりますが
19.弦捻りをかけると離れで弦枕が引っかからないか?
20.中りに重要なのは押し手ではないのか?

21.会では見えない動作がある?
22.残身まで開く力αはどれだけ大きくできるのか?
23.集中力、モチベーションを下げない練習方法ってないの?
24.弦捻りの中心は、矢軸か親指の弦枕か?
25.カケ解きはどのように作用させればいいの?
26.既製のカケは親指で選ぶ
27.弦捻りの誤解
28.勝手の中指で親指の腹を押し出すについて

29.弓返りに大切なのは弓の捻り

30.押し肘の回内はなぜ必要か?


31.夏の暑さから弓を守るには

32.的中率を上げるためにやれること

33.かけがえのないものを受け継ぐには

34.かけほどきを身につけよう

35.(続)夏の暑さから弓を守るには

36.両肘の張りと弓の裏反りは似ている?

37.的中を維持するには、お風呂でエクササイズという手がある

38.的中のための本当のねらいとは

39.かけほどきの力の反作用も考えてみよう

40.的中は矢から学べ


41.「矢に学ぶ」①矢を分ける

42.「矢に学ぶ」②矢筋にのせる

43.「矢に学ぶ」③矢押し

44.「矢に学ぶ」④矢引き

45.「矢に学ぶ」⑤矢の離れ口

46.「矢に学ぶ」⑥矢妻をとる

47.「矢に学ぶ」⑦矢になる

48.スランプの原因を物理的に考察する

49.取り懸けをミクロに考察してみる

50.取り懸けをミクロに考察してみる(大切な補足編)


51.「離れ」の瞬間を考察する


がんばれ!

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