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2018年8月11日土曜日

弓道の的中(射技)の物理的考察〜張り合いについて1〜

7−1.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~

<張り合い>

張り合いを単純に表現するならば、
離れるまで、以下の3つの方向の力をかけ続けている状態となります。これら以外の力が働くと、押し手や勝手がブレて矢は的付け通りには飛び出しません。せっかく整えた的付けを、わざわざズラして離すことになるのです。

張り ≒ 押し手で矢軸線上に真っ直ぐ押そうとする力
+矢軸線上に勝手を残身の位置まで真っ直ぐに開こうとする力
+取り懸けを解こうとする親指を中心としたカケ解きと弦捻りの力
これら上半身の作用を支える全身の力と合わせて、離れを生むための作用をさせている状態が会の張り合いと理解すると良いでしょう。逆に言えば、会ではこれら以外のことは何も考える必要はないと言うことです。

押し肩の収まりやら、勝手肘の収まりやら、もう会に入ったらいじる場合ではなく、会ではひたすら離れを生む努力を続けることです。(これらは、詰め合いまでで終わらせること)

張り合いは、概念的には、弓に負けることなく、緩むことなく、矢軸方向と残身に向かう力を膨らませ、風船が弾けるように離れを生むと、教えられてきたように思います。


では、張りはどのように効かせるのでしょうか?

引き分けから会に入る時、押し手は的付けまで降ろしてくる力と、勝手は弦を引きながら腕を折りたたんでくる力を働かせます。

これらは、離れの方向とはまったく違います。したがって、この時点で離すと残身へ開く方向への張りはかかってないので、腕がほとんど開かない小離れになります。暴発を起こした際、まさにこのようになります。

早気でもこれに近い形になります。
中には、早気でもそれなりに腕を開いて残身をとれる人もいますが、残身の位置まで腕を広げる動作をやるからであって、張りから生まれた残身ではありません。

会に入ってくると、弓の力の大半は腕と体の骨格が支えることになります。
抽象的には弓の中に入ると表現されるものです。筋力はその骨格を支える程度となるので、引き分けの時のような大きな力は必要なくなります。

ここからが、離れを生み出すための力(張り)を働かせることができる状態になるわけです。つまり、やっとスタートラインに立てたところなのです。

早気の人は、会を引き分けのゴールだと勘違いしています。
なので、ゴールにたどり着いた瞬間、反射運動で離す動作をやってしまいます。脳が引き分けは終わりだと指令を出すわけです。

考え方を変えて引けば早気は治ります。まだスタートラインに立ったばかりで、即、試合を放棄しているようなものだとしっかりと頭と体で理解してください。会はあくまでもスタートであって、引き分けのゴールではありません。

会では、離れる(スタートする)ための準備に入ります。
矢の軸線上に真っ直ぐな押しと引きの方向の力と、取り懸けを解くための掛け解きの力と弦捻りの力を、離れるまでゆっくりと増していきます。その先に離れが起こる。これが会での張り合いということになります。

力むことではありません。
離れが出るように仕掛けていくのですから、もたれになることも絶対ありません。もたれは、この離れるための準備の仕方を知らないか、途中で止めてしまっているだけなのです。

張り合いのポイント
①引き分けの力と会での力の方向の変換が、会の張り合いでの最初に行うことである。
②張り合いの力は、矢の軸線上に真っ直ぐに効かせること。
(矢の安定と真っ直ぐな離れのため)
③取り懸けを解く力(カケ帽子を中指で前に押出す)と弦捻り(カケ帽子を中心とした捻り)とで取り懸けを解く努力を続けて行くこと。
(カケ帽子(親指)を中心にすることでブレなく取り懸けが解ける)
④会は、「離れ」を生むための「スタートライン」である。
(引き分けのゴールでは無い)

張り合いは、④を念頭に、物理的には上記の①②③の3つを離れるまで続けて行くことだと私は解釈しています。
カケ解きの効かせ方(約35年前の先生の図解)と弦捻り

会のままの残身であろうとすること。

と、この部分の境地のことを私は先生から教わりました。離れは会の張り合いの中で起こることであって、残身までは会のままの力の作用のままで良いと言うことと解釈しています。つまり、残身までは会の状態のままであって、ブレの原因となるような余計な力(離す力)は加えないのです。

私が弓道を始めて35年以上が立ちますが、
当時と同じ様に、有段者でも矢こぼれ、弦払い、暴発、緩み離れ、掃き矢で困っている人は多いように思います。ひとつひとつの動作の意味をちゃんと理屈で正しく説明し、理解させて、教えることが必要な時代になっているのではないかと私は思います。

その思いもあって、私はこのブログで、取り掛けの方法から、具体的に説明させていただきました。

次回は、張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~の続編を予定します。的中と仲良しになるために、 またのお越しをお待ちしてます。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。

がんばれ!


弓道の的中(射技)の物理的考察
もくじ

0.弓道の再開


1.はじめに
2.的中のための取り懸けについて(三つガケの場合)
3.的中について
4.離れについて
5.手を開いて(緩めて)離すことの弊害について(的中、上達を妨げるもの)
6.詰め合いについて
7ー1.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー2.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー3.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー4.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
8.伸び合いについて
9.会のままの残身について
10.会での勝手の手の内を考える

11.取り懸けの親指と中指のクロスをどう解くか
12.取り懸けで親指を押える位置は?
13.押し手の手の内を作るとき、角見の皮を巻き込む?
14.「離す」と「離れる」はどう違う?
15.胸弦の活用
16.弓道の離れとアーチェリーのリリースとの比較
17.正射必中に必要な幾何学的な必須条件
18.細かい話にはなりますが
19.弦捻りをかけると離れで弦枕が引っかからないか?
20.中りに重要なのは押し手ではないのか?

21.会では見えない動作がある?
22.残身まで開く力αはどれだけ大きくできるのか?
23.集中力、モチベーションを下げない練習方法ってないの?
24.弦捻りの中心は、矢軸か親指の弦枕か?
25.カケ解きはどのように作用させればいいの?
26.既製のカケは親指で選ぶ
27.弦捻りの誤解
28.勝手の中指で親指の腹を押し出すについて

29.弓返りに大切なのは弓の捻り

30.押し肘の回内はなぜ必要か?


31.夏の暑さから弓を守るには

32.的中率を上げるためにやれること

33.かけがえのないものを受け継ぐには

34.かけほどきを身につけよう

35.(続)夏の暑さから弓を守るには

36.両肘の張りと弓の裏反りは似ている?

37.的中を維持するには、お風呂でエクササイズという手がある

38.的中のための本当のねらいとは

39.かけほどきの力の反作用も考えてみよう

40.的中は矢から学べ


41.「矢に学ぶ」①矢を分ける

42.「矢に学ぶ」②矢筋にのせる

43.「矢に学ぶ」③矢押し

44.「矢に学ぶ」④矢引き

45.「矢に学ぶ」⑤矢の離れ口

46.「矢に学ぶ」⑥矢妻をとる

47.「矢に学ぶ」⑦矢になる

48.スランプの原因を物理的に考察する

49.取り懸けをミクロに考察してみる

50.取り懸けをミクロに考察してみる(大切な補足編)


51.「離れ」の瞬間を考察する


がんばれ!

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