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2018年7月28日土曜日

弓道の的中(射技)の物理的考察〜手を開いて(緩めて)離すことの弊害について〜

5.手を開いて(緩めて)離すことの弊害について(的中、上達を妨げるもの)

手を開いて(緩めて)離す。初心者はこうしなければ離れられないので初めは仕方がありません。一番簡単な離し方なのですが、的中も出ないし、弊害だらけです。

初心者の域から抜け出すなら、手を開いて(緩めて)離すことの弊害を理解し、取り懸けを解いて離れる方法を身に着けて、上達への道へ踏み出しましょう。離れだけでなく、残身での味わいや心地良さも変わってくると思います。

①弦で耳や頭や腕をはらう。
矢をほおに付けるので、弦は耳の真後ろにあります。なぜ、耳に当たらないのか? その理屈は、会を上から見ると良く解ります。弦はカケ帽子の弦枕の位置にあるが、カケ帽子の先端は耳よりも体の前側にあり、弦枕から外れた弦の軌跡はカケ帽子の先を通り耳の前側を通ることになるので、物理的に耳には当たらないようになっているのです。
ところが、
初心者は手を開いて(緩めて)離すので、弦はそのままの位置から戻り、わざわざ自分で耳や頭や腕に当たるように離していることになるのです。弦ではらうのは痛いし、怖いし、嫌になります。
まずは、この物理的に当たらない理屈を理解させて恐怖心を取り除き、応急処置としては、勝手の捻りを効かせるようにさせ、親指はそのままの位置で中指側で手が開くように指導すると良いでしょう。

角見や弓返りが効いていないせいだと押し手の手の内を指導する人がいますが、矢羽根の長さほどしかない距離の瞬間的な移動で角見や弓返りが影響しているとは考え難く、物理的な根拠に乏しい、実に疑わしい指導であると思います。(弓返りしなくても払わない人はいます。このことが疑わしいことを証明しています。)

②押し手も開いてしまう。
勝手の動作に合わせて押し手も開く(緩める)ので、手首から浮き上がったり弓を投げたりする場合もあります。かっこいいものではありません。矢所も定まりません。

③会と残身が別ものになる。
会の張りと別の方向に力を急に働かせて離すので、会とのつながりが無くなり、せかっくきれいに引いてきた射の流れを台無しにします。会と離れの間に「動作の節」が入るので、見ていてすぐにわかります。

④矢所が散る、矢が的に中らない。
勝手の腕を開くことをきっかけに、手を開く(緩める)動作をするせいで、せっかくの的付けをわざわざずらして離すことになるので、的の中に矢が飛んでくれる筈はありません。初心者のほとんどはこの離し方なので、いくら練習をしても、射形が良くても的中が伸びず、しまいには弓を引くのが嫌になってくるのです。正しい離れ方を理解して、的中を伸ばし、少しでも楽しく弓が引けるようになってもらいたいものです。

初心者は射法八節と弓を引くための筋肉を身につけることが優先なので、手を開いて離すのはしかたないとおもいます。しかし、上達のためには、手を開く(緩める)ブチ切りの離し方からは卒業しましょう。上達の妨げになります。

取り懸けがなぜこのような形をしているのか?
カケと言う道具の正しい使い方は?
なかなか理屈を教えてくれる人がいないのは何故だろう?

ここで出来ればもう一度、「的中のための取り懸けについて」を復習しておいて欲しいと思います。取り掛けを解いて離れるために必要不可欠な要素となります。

次回は、いよいよ核心である取り懸けを解いて離れる方法を、詰め合い、張り合い、伸び合いと合わせて物理的に考察していきます。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしております。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。

がんばれ!

弓道の的中(射技)の物理的考察
もくじ

0.弓道の再開


1.はじめに
2.的中のための取り懸けについて(三つガケの場合)
3.的中について
4.離れについて
5.手を開いて(緩めて)離すことの弊害について(的中、上達を妨げるもの)
6.詰め合いについて
7ー1.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー2.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー3.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー4.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
8.伸び合いについて
9.会のままの残身について
10.会での勝手の手の内を考える

11.取り懸けの親指と中指のクロスをどう解くか
12.取り懸けで親指を押える位置は?
13.押し手の手の内を作るとき、角見の皮を巻き込む?
14.「離す」と「離れる」はどう違う?
15.胸弦の活用
16.弓道の離れとアーチェリーのリリースとの比較
17.正射必中に必要な幾何学的な必須条件
18.細かい話にはなりますが
19.弦捻りをかけると離れで弦枕が引っかからないか?
20.中りに重要なのは押し手ではないのか?

21.会では見えない動作がある?
22.残身まで開く力αはどれだけ大きくできるのか?
23.集中力、モチベーションを下げない練習方法ってないの?
24.弦捻りの中心は、矢軸か親指の弦枕か?
25.カケ解きはどのように作用させればいいの?
26.既製のカケは親指で選ぶ
27.弦捻りの誤解
28.勝手の中指で親指の腹を押し出すについて

29.弓返りに大切なのは弓の捻り

30.押し肘の回内はなぜ必要か?


31.夏の暑さから弓を守るには

32.的中率を上げるためにやれること

33.かけがえのないものを受け継ぐには

34.かけほどきを身につけよう

35.(続)夏の暑さから弓を守るには

36.両肘の張りと弓の裏反りは似ている?

37.的中を維持するには、お風呂でエクササイズという手がある

38.的中のための本当のねらいとは

39.かけほどきの力の反作用も考えてみよう

40.的中は矢から学べ


41.「矢に学ぶ」①矢を分ける

42.「矢に学ぶ」②矢筋にのせる

43.「矢に学ぶ」③矢押し

44.「矢に学ぶ」④矢引き

45.「矢に学ぶ」⑤矢の離れ口

46.「矢に学ぶ」⑥矢妻をとる

47.「矢に学ぶ」⑦矢になる

48.スランプの原因を物理的に考察する

49.取り懸けをミクロに考察してみる

50.取り懸けをミクロに考察してみる(大切な補足編)


51.「離れ」の瞬間を考察する


がんばれ!

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