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2025年8月9日土曜日

◎弓道の的中(射技)の物理的考察〜正しい打起しにはムダが無い〜

64.正しい打起しにはムダが無い


最近、SNSに射形の動画が上がっているのを見ることが多くなりました。「バンザイ」打起しになっている方も多くて、正しい「打起し」の形とはほど遠い状態になっていて、気になっています。しかしながら、「打起し」の形は、的中との相関はほぼ無いので、物理的考察の対象外かとも思えます。

正しい「打起し」から大三の形(弓道教本 第一巻より)

※両肘を少し曲げています。


しかし、「打起し」の形にはそれなりの意味があるので、考察しておきたいと思います。



<仮説>

正しい「打起し」によって、ムダ無く「会」を創ることができる。



<検証>

正面打起しについてのみの検証です。


(1)弓構えにおいて、円相の形をとる(両肘を曲げる)ということは、自然に両肘の回内を整えるという機能があります。30.押し肘の回内はなぜ必要か?参照

弓構えの形(弓道教本 第一巻より)

腕をまっすぐ伸ばしていると、(骨格上)回内はできないのです。(上図のように肘を曲げた場合と伸ばした場合で、やってみるとすぐ解ると思います)


また、円相の形をとると、押し手(弓手)の手の内と弓の十文字、取り懸けと弦の十文字を保つこともできます。肘を伸ばしたままでは、(骨格上)十文字(直角)は出しづらく、ベタ押しやたぐりになり易いのです


(2)円相の形をとった(両肘を曲げた)まま「打起し」を行うことによって、肘の回内、手の内の十文字③と取り懸けの十文字④を保ったまま、弓を垂直に保持して行くことが出来ます

押し手(弓手)勝手(馬手)


肘を伸ばしたままの「バンザイ」打起しでは、肘の回内、手の内と取り懸けの十文字(直角)は(骨格上)保持することが難しく、崩れるのです。


(3)円相の形を保ったままの「打起し」からは、最短の軌跡・最少の力でムダなく大三に移行することが出来ます

押し手(弓手)は、肘から先で弓を押し出し始める①のに対して、肘を伸ばした「バンザイ」の状態では腕全体で弓を押し出し始めないといけない②ので、必要な力はほぼ倍になっています。しかも、肘の回内もさせながらという複雑な運動になってしまいます。


勝手(馬手)は、右肘①'と右肩①''を押し上げる「ふところを大きくとる位」(右肘①'と右肩①''を押し上げ、右肩関節を背中側に移す動きをこう教わりました)を行うことが出来ます。


この位置から押し上げた右肩を右肘と同時に下げるように引き分けることによって、勝手(馬手)の肘は肩から後ろに入れるようになります。肘を伸ばした「バンザイ」の状態からでは、「ふところを大きくとる位」が取れないので、勝手(馬手)の肘は肩から前にしか入りません。(骨格上、肩を上げずに右肘を押し上げることはできません。大三で肩を上げないように指導する人もいますが、会で右肘を後ろに入れることが難しくなります。)


このように、物理的にみればけっこう単純な理屈なのに、その理屈を教わる機会はなかなか持てません。それに気付くか身につくかは、鍛錬として委ねられます。しかし、正しい射形には、その形に意味があります。ダンスを踊るときのポーズのように捉えても良いので、正しい形にはこだわってください。


「バンザイ」打起しは、美しさも感じられないし、ムダだらけです。


射形を意識しながら、打起し〜大三〜会までを引いた動画です。参考にしてください。

特に、大三のときの勝手(馬手)の「ふところを大きくとる位」の取り方は重要です。

大三〜引き分けは、押し手(弓手)から始動するようにしましょう。このことが、会〜離れの力のバランスにも影響します。



<まとめ>

肩や肘の上がり下がり、手の内の整いなど、細かいことはあまり気にせずに、教本にある射法八節図解の形をカッコ良いダンスとして捉え、正しいポーズにこだわって一射を引いてみてはいかがでしょうか?


動作するとき、自分の呼吸に合わせると、自然なリズムとなるでしょう。



的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。

解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。


がんばれ!

2025年5月31日土曜日

◎弓道の的中(射技)の物理的考察〜離れの起こるメカニズムを考察してみる〜

 63.離れの起こるメカニズムを考察してみる


「会は、離れを生むためにある」

離れを起こすことに向き合う時間、それが会である。とすると、どのように離れは生まれるのでしょうか?



<仮説>

離れが起こるメカニズムがある



<検証>

さて、射法八節図解には、「両肩の線を矢に近づける」と表記されていますが、実際には口割りで矢を押し出してしまうため、物理的には「両肩の線を矢に近づける」ことは不可能です。なので、「両肩の線を矢に近づける」方向に力を働かせると言うふうに解釈すると、会での力のかけ方(ベクトル≒張り)が解ってきます。


これは、58.的中率をさらに上げるためにやれること〜(アップデート)で説明した「会四節」の「4.引きつけ」にあたります。


では、「会」の理解のために、その上腕の「引きつけ」がどう作用して離れを起こすのか、メカニズムを考えてみましょう。


上図に示すように、

  1. 上腕の「引きつけ」の力をかけることによって、右肩と折りたたんだ右腕の取り懸けの部分との半径Rで回転しようとする①’の力が働き、弦に作用します。
  2. 会での取り懸けの内では、弦を弦枕で押し出す方向に②の力を働かせています。
  3. さらに上腕の「引きつけ」ようとしても、弦は胸弦の位置で止まっているので、③の反力が生まれ、取り懸けに作用する③’となります。
  4. 取り懸けを解こうとする力②と③'が相乗作用を起こし、取り懸けを解きます。
  5. また、手の指を動かす筋肉は、上腕骨の肘の部分に付いています。腕を折りたたんだ状態で上腕が動けば、指は開く方向に動いてくれるのです。(61.会から離れの物理的考察を俯瞰して観る参照)
  6. これによって、上腕が緩むことなく、会のままの状態の「離れ」が生まれるのです。

これが、物理的にみえた「離れ」のメカニズムです。


したがって、上腕の「引きつけ」の力①が欠けても、弦を押し出す力②のどちらかが欠けても会のままの状態の「離れ」は生まれにくくなり、矢所はばらつきます。



<まとめ>

くどいようですが、


残念ながら、物理的にみると、的中するかどうかの90%以上(ほぼ100%)は離れをどのように迎えるかだけで決まります。

<参考>

54.「角見で押して離れる」という弓道の謎

55.「角見で押して離れる」という弓道の謎(補足編)


会のまま離れることで、的中は実現するのですから、早気であっても的中は出せます。しかし、離れが起こるメカニズムを理解することで、「会四節」を取り入れて、離れを生むための会に取り組むようにしてみてはいかがでしょうか?安定した的中が得られると思います。


早気の人は、すぐに直ると思います。



的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。

解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。


がんばれ!

2025年4月26日土曜日

◎弓道の的中(射技)の物理的考察〜早気の人への親切なアドバイス〜

62.早気の人への親切なアドバイス


早気の人は、自分では気付いていないかもしれないので、率直な私の意見を言わせていただきます。


例えば、昇段審査では、

射法八節が理解され実践できているかが評価されるわけです。早気で臨むということは、会を理解して実践できていないことを、実証してしまっていることにお気づきでしょうか。


審査でなくても、普段の練習においても、本人はまったく意識してないとは思いますが、「自分は会を理解できていません」と体現しているとしか、私には見えないのです。


私は、早気には成れません。(もたれにも成れません。)

「会」の意味を、私なりに理解してしまったので、意味があるものを、決して省くことはできないのです。


<仮説>

早気の根本原因は、単なる「思考停止」である。(もたれも同様)



<検証>

大三で離す人は、ほぼいないでしょう。(暴発を除いて)

なぜなら、決して大三では離してはいけないと、誰もが理解しているからです。


しかし、会のない早気の人は、少なくもなく存在しています。

なぜなら、会で早く離してはいけないと思いつつも、反射的に早く離しても「テヘへっ早かった?」ととぼけていれば許されるというような深層心理を持っているからなのでしょう。本当にいけないことだとは思っていないし、会で何をやるべきなのかを理解してないし、理解しようともしていない。つまり、思考停止状態になっているのです。


例えば、3秒以上持てなければ、罰を与えるようにすれば、罰を受けるのが嫌なので、時間間隔的には持てるようになるでしょう。しかし、ただ持っているだけという意味のない会になります。これも、ある意味、思考停止になっています。

(これは、大学時代の部活で早気の人たちを治すためにやったことなのですが、試合の緊張感の中では間合いを持たせてくれるので、ある程度の効果を発揮してくれました)


やはり、

意味のある「会」にするためには、「会」が何のためにあるのかを理解して、実践するほうが合理的です。



弓道教本 第1巻 射法八節図解には、以下のように記されています。


「会」

心身を合一して発射の機を熟せしむ

胸は息を詰めず、らくに腹の力が八分九分に詰まった時が離れである


「離れ」

胸郭を広く開き矢を発せしむ。

上下左右に十分伸び合い気力丹田に八九分詰りたる時気合の発動により矢を発する。


この文章をどのように理解すれば良いのか、理系脳の私にはよく解りません。

文字通りに受け止めると、以下のようにも読めます。


「会」:心と身体で離すタイミングを熟成する。腹の力を八分九分に詰めたところが離すタイミングです。


「離れ」:胸の骨格を広く開いて矢を離す。上下左右に十分伸び合って、気力を丹田に八九分詰めたタイミングで、気合で矢を離しましょう。


このように、会は矢を離すタイミングをとるためにある、としか読めないような記述になっているように思えて、会の内容を理解できない人ができてもいたしかたないように思えてきます。


「会は、離れを生むためにある」


と私は理解しているので、会の中では、離れを出すためにできることを尽くします。(以前、わかりやすいように、会四節として提案させていただきました)

   <参照>58.的中率をさらに上げるためにやれること〜(アップデート)




<まとめ>

残念ながら、物理的にみると、的中するかどうかの90%以上(ほぼ100%)は離れをどのように迎えるかだけで決まります。

<参考>

54.「角見で押して離れる」という弓道の謎

55.「角見で押して離れる」という弓道の謎(補足編


会のまま離れることで、的中は実現するのですから、早気であっても的中は出せます。しかし、会から離れにおいて全力を尽くしてない早気の方の射は、私が見ても、あんこの入っていないあんぱんにしか見えません。つまり、肝心な味が感じられないのです。非常に残念に思います。(まれに、味わいのある早気の方もいるのですが・・・)


みなさんなりの会の理解によって、みなさんなりの味のある「会」を生み出しては、いかがでしょうか・・・。そこに、射技の本質があるように思います。


早気を直す唯一の方法は、

「会」の意味を考え、理解しようとすることだけだと考えます。



的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。

解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。


がんばれ!

2024年9月29日日曜日

◎弓道の的中(射技)の物理的考察〜会から離れの物理的考察を俯瞰して観る〜

61.会から離れの物理的考察を俯瞰して観る


「弓道の的中(射技)の物理的考察」は、ついに60項目を超えました。

この節目にこれまでの断片的な考察から、射技で最も重要な「会から離れ」について、理解しやすいように、まとめて観れるようにしておきたいと思います。


最初に立てた仮説は、こうでした。


  • 的中に最も重要なのは、「馬手(勝手)の手の内とその働かせ方」である。
  • 弓手(押し手)はさほど重要ではない。的付けどおりに真っ直ぐに押せてさえすれば充分である。
  • そもそも、人は同時に左右別々の動きをするのは苦手である。勝手をうまく働かせれば、同期した反射運動として押し手も働く。
  • 的(押し手)ばかりにとらわれず、正しい方法で勝手を働かせることが、正射必中への道である。


そこで、実際に離れを行っている勝手(馬手)の働きに注目して、考察を行なってきました。(弓道界ではタブーなことをやってきたのかも知れませんが・・・)


これまでの考察結果の「会から離れ」についてのまとめです。


(引用)

7ー3.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~

28.勝手の中指で親指の腹を押し出すについて

32.的中率を上げるためにやれること

50.取り懸けをミクロに考察してみる(大切な補足編)

51.「離れ」の瞬間を考察する

54.「角見で押して離れる」という弓道の謎

55.「角見で押して離れる」という弓道の謎(補足編)

58.的中率をさらに上げるためにやれること〜(アップデート)


上図のように、

  • 会では離れを導く作用を働かせ続けることが大切です。
  1. 取り懸け内の力のかけ方(ベクトル)
  2. 右肘の張り(ベクトル)
  • これらが離れを生むのです。


(補足)

離れが硬くなってしまう場合は力み過ぎが考えられます。力をかける方向(ベクトル)を意識しましょう。


会から離れの上半身の動きを支えるため、両足のひかがみを張り続けることも忘れないでください。両肘と両ひかがみを結ぶ線の中心は丹田で交差して繋がって、物理的に安定した状態を作ります。

教え魔な先生のレポートにあったイメージ図 


(早気の人は、この射技において最も大切な会での目に見えない動作をやらずに、自ら放棄してしまっていることを認識してください)


離れにおいて、右肘の張りを働かせることができれば、取り懸けを解く手の指の動きを同時に働かせることにもなります。


なぜなら、

手の指を動かす筋肉は、上腕骨の肘の部分に付いているからです。身体の構造がそうなっているのです。(下図)


さらに、右肘の張りを働かせるということは、

上腕は両肩の線より後ろには回らない(骨格構造上)ので、肘が開くためには、肩関節のある肩甲骨についた背筋(僧帽筋)を働かせることが必須です。(36.両肘の張りと弓の裏反りは似ている?参照)


そのイメージが、「両肩の線を矢に近づける」(弓道教本第一巻 射法八節図解)に繋がります。

背筋(僧帽筋)の位置

教え魔な先生のレポートにあったイメージ図 


動作を実現するには、まず、その動作のイメージと筋肉の働きを頭の中に描くことが大切です。


27.弦捻りの誤解58.的中率をさらに上げるためにやれること〜(アップデート)も参照してください)


迷った時、スランプに陥った時、

私がまず立ち返るのは「9.会のままの残身について」です。訳のわからなくなった状態を原点位置に戻してくれるように思います。そこから、今回まとめた内容を1つづつ復習することで的中との仲を取り戻せるのです。



次回は、未定 を予定します。

的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。

解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。


がんばれ!


2024年8月11日日曜日

◎弓道の的中(射技)の物理的考察~(続々々)夏の暑さから弓を守るには、実はすごく簡単だった~

60.(続々々)夏の暑さから弓を守るには、実はすごく簡単だった


今年もほんとに暑い日が続きます。


炎天下の車の中に置いた弓を暑さから守るため、吸気ファン+配管用断熱材の中に弓+ソーラー電源を用いて、外気を弓にあてて車内の熱気から守る工夫をしました。


車に取付けた状態

ソーラー電源(DC12V・最大出力100mA)


(参照)

31.夏の暑さから弓を守るには

35.(続)夏の暑さから弓を守るには

56.(続々)夏の暑さから弓を守るには


しかし、実は、こんな手のこんだことをしなくても良かったのです。



<仮説>

夏の暑さから弓を守るには、車の下に置けばいい。



<検証>

炎天下の駐車場に置いた車の車内のセンターコンソール上と車の下の温度の変化を測定してみます。(FRウィンドウには日よけを置いてあります)

車内車の下


車内コンソール上では、60℃近くまで上昇しているのに対し、車の下では日影になるので、35℃のほぼ気温と同じ状態です。この場所を利用しない手はありません。


車内と車の下での温度変化


どうしても、炎天下の車に弓を置かなければならない時、車の下においておくのが無難なようです。急な雨にも備えて、雨対策はしておくことが肝心です。

車の下に弓を置く

(※くれぐれもマフラーの下には置かないように・・・)


もし、盗難が心配なら、ロックした車室内と弓を防犯ブザーでつないでおくといいでしょう。


くれぐれも、弓の回収忘れには注意してください。(車でひいてしまうかもしれませんので)


残暑も続きます。今年の夏はこれで乗りきることができそうです。



次回は、未定 を予定します。

的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。

解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。


がんばれ!

2024年7月27日土曜日

◎弓道の的中(射技)の物理的考察〜既成概念は「離れ」と「残身」をも誤解させる〜

59.既成概念は「離れ」と「残身」をも誤解させる


離れは、

取り懸けが解けて弦が勝手(馬手)から放たれる瞬間的な現象です。したがって、物理的にみれば、離れに大きいも小さいも無いのが事実です。しかし、残身の形を表すのに「大離れ」「小離れ」と呼びます。


しかも、

最近は大離れを推奨するので、多くの人は、まず、大きく引き離すよう指導されます。初心者に残身の形を覚えさせるためにはしかたないことなのですが、「大離し」の練習を続けて引き離しとなったまま、矢所は的の周りを回るか掃き矢になってしまう。これは誰もが経験していることと思います。(幕打ちする場合もあるほどです)



<仮説>

「離れ」と「残身」の誤解がまねく大離し(お話し)



<検証>

物理的な目で素直に見れば、大きいか小さいかは「離れ」ではなく「残身」です。したがって、「大残身」「小残身」と呼ぶのが正しい表現と言えるのでしょう。


しかし、言葉のごろが悪いからなのか、響きが悪いからなのか、既成概念では「大離れ」「小離れ」と呼びます。このことが「離れ」の誤解を生んでいるのではないかと推測します。大きく離す動作が良い離れだと・・・。


「離れ」は瞬間のできごとです。大きい小さいは関係ありません。

「離れ」の瞬間

51.「離れ」の瞬間を考察する参照)


初心者には、形(フォーム)を覚えさせるため、弦を離すと同時に大きく腕を開く動作を「大離れ」だと指導します。


それはやむを得ないことなのですが、形を身につけたその先に本当の「離れ」の本質を指導してもらえる機会にはなかなか恵まれません。

大きな「残身」(大離れではありません)


そして、

多くの人は、「離れ」を弦を離して腕を大きく開く動作として誤解してしまいます。離すタイミングが合わなくなると、途端に的中が止まってしまいます。その結果、正射必中との乖離に慣れてしまいます。


ここに、

射技の進歩に壁ができるように思います。

(的中に悩むことなく、弓を引くことを楽しめるような射技の伝承ができていくことに期待して、私は少しでもこのブログがきっかけになればと思っています)


このブログを読んで「離れ」と「残身」の違いを知ってしまったあなたは、この壁を破るきっかけを得たということだけは確かです。


会では、大きく離すタイミングを取る練習を続けるのではなく、取り懸けが解けて「離れ」がでる方向に張り(筋力のベクトル(方向))をかけていくことに、気力や気合いを注ぐことに意味があるように思います。



<補足>

引離しであるかどうかを簡単に確かめる方法があります。

これは、私が学生の時に指導してくださった教え魔な先生がやった方法です。


まず、

先生が引くので、会で右腕が開かないように両手で押さえなさいと言われ、その通りに腕を押えたのですが、先生は普通に離れを出して矢を射たのです。(当然、右腕を押さえているので、弓力が解けた反力はあります)

腕が開かないように両手で押さえる

次に、

自分たちも同じように、会で右腕を押さえてもらって引いてみましたが、まさにツボを突かれたようにまったく離せないのです。手を開いて離そうと考えますが、耳に弦が当たりそうで怖くて手を開らけません。


まさにこの時、「自分たちは弦が当たらないよう腕を開きながら良いあんばいに手を開いて離している」ということに気付かされたのです。


※この方法は危険がともないますので、やる場合は自己責任でお願いします。



<まとめ>

・「離れ」に「大きい」「小さい」はあるか?・・・ない。

・「残身」に「大きい」「小さい」はあるか?・・・ある。


大切なことは、

いつまでも「大離し」の引き離しのままでいては、的中とは仲良くなれないということです。


物理的にみれば、手先の技の働きがなければ、「離れ」が起きないのは確かです。

既成概念では「離れでは勝手(馬手)は意識するな」と言われますが、人は意識しないで動作ができるはずはありません。(反射運動を除いては)


正しく表現するなら、

「意識しなくても「離れ」がでるような動作ができるようになること(身につけること)」と言い換えた方が、私たちが練習で何をやるべきかを理解しやすいのでしょう。


気力や気合いで出そうとする動作=技は、そもそも身についていないと働かないというのは明らかなのです。もし、気力や気合いだけで動作=技が出せたとしたら、それは神業です。達人が生まれた瞬間に出会えることになるのでしょう。(私のような凡人には訪れることのない瞬間です)


私のような凡人でも、正射必中に近づく努力は(楽しみながら)続けていきたいものです。



次回は、未定 を予定します。

的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。

解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。


がんばれ!

2024年6月8日土曜日

◎弓道の的中(射技)の物理的考察〜的中率をさらに上げるためにやれること〜(アップデート)

58←52.的中率をさらに上げるためにやれること(アップデート)


(「52.的中率をさらに上げるためにやれること」を検証後、さらに精度を高めようとすると、提案した会四節の順番を変えたほうがうまくいくことが確認されたので、今回、アップデートすることにしました。)


32.的中率を上げるためにやれることの説明から3年が経ちました。


①胸弦をしっかり付けて、弓を安定させ弓をしっかりと引き付けること。

②両肘で矢軸線方向に張り、会のままの離れを導く努力をすること。

この2つを意識して、精度高く引くことです。特に②は必須です。

➡︎

肘の張りで離れている的中


と説明しましたが、皆さんは、身に付けることができたでしょうか?

上記が身についていれば、50%以上の的中は出せるようになっていることでしょう。


そうでない場合には、もう一度、取り懸けと懸け解きを復習してみることをお勧めします。


ここからさらに的中率を上げるには・・・、

常識的な人は、「射技の向上を目指すことである」とでも説くのでしょうか。


しかし、物理的にみると、射技の上達はしなくても、

”的中している時の射をどれだけ再現し繰り返せるようになるか”

ということに尽きます。


弓道を始めて数年でも、9割以上の的中が出せる人の存在が、このことをすでに証明しています。



<仮説>

的中率をさらに上げるには、自らのルーティンとその目標を持つこと。


<検証>

さて今回も、結論から説明します。


的中率をさらに上げるためには、

①(射法八節)+会四節

②弦捻りのルーティン

上記2つの実行を提案します。


弓道のルーティンといえば基本的に射法八節ですが、最も大切なのは会です。このことは、誰もが認識していることだと思います。


しかし、

経験の浅い多くの人は早気です。

引き分けて会に入るや否や、的付けが付くや否やで離してしまっている人が多い。

その原因は、会の意味が理解されていないことによるものと推察します。

意味がないものは省かれる。それは必然でしょう。


会の意味が、気合の充実と説明してみても、とにかく解り難い。

なので、物理的にみた4つの節を会の中に置くことを、私は提案します。


①会四節

1.ねらい

2.弦押し(勝手(馬手)の手の内の形と力の方向を整える)←捻り

↓↓3.捻り(親指中心にゆっくりと)←押し

↓↓↓4.引付け


1.ねらい

的付けとほお付けを整え、さらに、矢軸線方向に張りの方向を合わせることです。

38.的中のための本当のねらいとはで説明したように、的付けとほお付けだけでは狙いは整いません。

的付けほお付け

矢軸線方向の張り


2←3.弦押し(勝手(馬手)の手の内の形と力の方向を整える)

大三〜引き分けまでは暴発しないように、弽帽子を押さえ弦枕で弦を受け止めています。このままでは、手を開かなければ離せないのはあたりまえです。

ここで、初めて取り懸けが解けるように状態をシフトさせます。

具体的には、弦を受け止めていた弦枕で、今度は逆に、弦を前に押し出すように力を効かせ、取り懸けが薄くなるように絞るようにします。

このことは、

2.的中のための取り懸けについて(三つガケの場合)

49.取り懸けをミクロに考察してみる

50.取り懸けをミクロに考察してみる(大切な補足編)

51.「離れ」の瞬間を考察する

を参考にしてください。


<補足>

弦を前に押し出す感覚がわからないときは、指パッチンをするときの親指の第2関節(弦枕にあたる部分)の動きに注目してみるとよいでしょう。

懸け解きと指パッチンが異なる点は明確で、取り懸けは中指で親指を上から押さえる形になっているので、解くために弦捻りの力の利用を必要とする点です。

親指の第2関節部の動きは、親指を反らす場合とほぼ等しくなっていることも確認して納得しておくといいでしょう。(親指を反らすと残身で手が開いてしまいますが、親指の弦枕で弦を押していく方法では手は開きません)

押す力の強さは、各自の研究課題です。会の中でゆっくりと強めていくことで、感じ取ってください。弽帽子が逆に反りそうなくらいを目指すと良いでしょう。

親指で弦枕を押す→弦枕で弦を押す→弦は人差し指を押す→人差し指は中指を押す→取り懸けが解けるということになるので、決して握り込みにはなりません


3←2.弦捻り(親指中心にゆっくりと持続)

引き分けるとともに増加してきた弓力に合わせて強めてきた弦捻りの力の方向(ベクトル)を確認します(肘の張り利用して)。そうして、親指と中指が滑り出しそうになるレベルであることを感じます。


4.引付け

会の長さに慣れていないと、1〜3節まで進めてくる間に弓の引付けが甘くなってしまいます。それを克服するために、1〜3節を保ちながら両肘の張りで、再度、弓を引付けます。(射法八節図解には、「両肩の線を矢に近づける」と表記されています)


射法八節では、各節でそれぞれの動作を行いますが、会四節では、それぞれの動作を重ねていかなければならないということを、絶対に忘れないでください


会四節は、決して力む訳ではありません。力をかけている方向(ベクトル)を確認することと理解してください。


会四節は、かなり意識して行っても、外見からはまったく見えない動作になっています。(21.会では見えない動作がある?参照)

引分け会1会2

会3会4残身

(「”離れ”を意識するから離すようになる」と当時は教わりました)


弦捻りのルーティン

会四節に不可欠な前準備のルーティンになります。次回に説明します。



<まとめ>

会四節の「2←.弦押し」は、49.取り懸けをミクロに考察してみるにも書きましたように、


もしかすると、

私たちがよく耳にする「角見で押して離れる」と言う表現は、このことを言っているのかも知れませんし、ただ、私たちが、勝手に、押し手のことと勘違いしているだけなのかも知れません。敵には明かせない手の内も、押し手のことではなく勝手の取り懸けにあるのではないでしょうか・・・


の信憑性が高まることにも繋がっているように思います。


会四節の提案が、皆さんの射技の上達・的中率の向上に役立てば幸いに思います。


会が無い、早気を治しなさい、と注意されても、会がどんなものなのかをちゃんと定義してもらわなければ治せるわけはないでしょう、と早気の人を見るたびに思ってしまいます。


次回は、弦捻りのルーティンを予定します。

的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。

解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。


がんばれ!