43.「矢に学ぶ」③矢押し
今回の2ヶ月の弓道場の休館期間は、稽古のブランクからの復活の方法を学ばせてくれました。もうこのようなことが無いことを望みますが、受験、就活、体調不良、出張、転勤などでブランクになってしまう人も多いかと思います。そういったときのリスタートを好機に、ぜひ、このブログの記事を参考にして理にかなった引き方を身に付けてください。
「矢に学ぶ」
③矢押し(今回)
④矢引き
⑤矢の離れ口
⑥矢妻をとる
⑦矢になる
昔の考え方なので、今では違和感があるところもありますが、今回も原文のまま紹介したいと思います。
「矢に学ぶ」(原文)
S59.10.25
③矢押し
「矢押し」と申しますのは「矢筋」回りに、「手筋」を動かすということであります。一般には押手に「伸びをとる」と申しています。
先ず大三で少し「振り込み」することによって、押肩の据わりをよくし、次に大三からの引分けには、先ず押肩から「下筋」を使って押しはじめ、三分の二あたりで押肘を「詰め」、会にはいる前に「上筋」をキチンと定め、弓圧は「角身」一点で受け止めます。(以上押技)
会にはいったら「鵜の首」(親指)を油断なく的に近づけるよう伸ばして行きます。これが「心気の働き」です。このとき「小指」を自分の方に引き寄せると一層角身が利きますが、その「利き具合」が緩急自在でなければなりません。(以上手の裏)
ここでのポイントは、以下の3点になります。
①的に向かって真っ直ぐに押していくこと。
②角見で弓を押すこと(ベタ押しにならないこと)。
ここは、既成概念の部分なので、物理的には、弓の捻りを効かせて、角見の皮を巻き込み、中手骨で真っ直ぐ押すということになります。
③弓の姿勢は角見と小指で安定させること。
②がよく誤解されます。
実際には、弓は虎口(親指と人差し指の間)に面で当たっており、角見の部分が強く当たっていれば良いわけですが、皆さん「角見で押す」と表現するので、文字通り角見の部分を弓に当てて手首を控え過ぎ手首を捻るように離す人も多く、このような離れになっている人は、往々にして、頭や腕を弦で払ってしまっています。
以下の記事を参考にして下さい。
注意したいのは、小指を無理やり巻き込んで、ベタ押しや握り過ぎにならないことです。手首の力みで弓の姿勢を崩してしまいます。虎口と小指の引っ掛かりの2点で充分です。弓返りは手の皮と弓との捻りのモーメントが起こしてくれます。
大三からの引き分けの時の力のかけ方の説明もあります。矢の水平と体との平行を保つようにして(ここが非常に難しいのですが)、動作を押しから行うことを意識して引けば、自然にこの説明のようになってくるでしょう。
<まとめ>
弓道の伝承には、誤解を招く表現もあります。鵜呑みにするのではなく、冷静に物理的に考え、理屈に合わないと感じたら良く確認して行い、射癖とならないようにしましょう。
私は、大学の弓道部で弓道を始めました。最初は、高校からの経験者が良く的中を出すので羨ましく思いましたが、身に付いた射癖が修正できずに伸び悩む人も多かったように思います。理屈を理解できれば修正は出来ます。
次回は、「矢に学ぶ」④矢引き を予定します。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。
1.はじめに
2.的中のための取り懸けについて(三つガケの場合)
3.的中について
4.離れについて
5.手を開いて(緩めて)離すことの弊害について(的中、上達を妨げるもの)
6.詰め合いについて
7ー1.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー2.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー3.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー4.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
8.伸び合いについて
9.会のままの残身について
10.会での勝手の手の内を考える
11.取り懸けの親指と中指のクロスをどう解くか
12.取り懸けで親指を押える位置は?
13.押し手の手の内を作るとき、角見の皮を巻き込む?
14.「離す」と「離れる」はどう違う?
15.胸弦の活用
16.弓道の離れとアーチェリーのリリースとの比較
17.正射必中に必要な幾何学的な必須条件
18.細かい話にはなりますが
19.弦捻りをかけると離れで弦枕が引っかからないか?
20.中りに重要なのは押し手ではないのか?
21.会では見えない動作がある?
22.残身まで開く力αはどれだけ大きくできるのか?
23.集中力、モチベーションを下げない練習方法ってないの?
24.弦捻りの中心は、矢軸か親指の弦枕か?
25.カケ解きはどのように作用させればいいの?
26.既製のカケは親指で選ぶ
27.弦捻りの誤解
28.勝手の中指で親指の腹を押し出すについて
37.的中を維持するには、お風呂でエクササイズという手がある
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