<伸び合い>
これが特に抽象的で難解です。
しかし、安定した的中や鋭い離れを生むためには不可欠なものとなります。
会の状態は外観では静止状態で、矢束や身体が伸びたりする訳はないのに、伸び合えと言っている。張り合いとは違う表現なので、張り合いとは違うものであることは確かだろうと思います。
伸び合いは、人が次の動作を瞬時に行うための瞬発力を発するための溜めであると、私は解釈しています。矢勢を出すためと説明する方もいますが、物理的に考えれば矢の初速に影響を与えるとは考えにくく、聴覚や視覚による錯覚だと思われます。
伸び合いを簡単に表現するなら、離れのスタート位置(会)に着いたあと、そこから移動する残身の位置(ゴール)を定めて、そこに向かってブレ無くスムーズにスタート(離れ)を切ろうとする、次の動作への準備状態と理解するといいでしょう。
力みでは実現できません。力みでは必ずブレが生まれ、タイミングのズレも生まれます。このことは、誰もが何かにつけて経験していることだと思います。
例えば、短距離走のスタートで正に走り出そうとしているランナーはどうでしょうか。静止した状態から狙ったゴールの方向に真っ直ぐスムーズに動き出そうとする。その準備ができていなければ、素早くブレの無いスタートは生まれません。
この時と同じ体と心の状態を創り出せれば、会の静止した状態からでも次の動作へのスムーズな流れを創れるようになり、離れにはキレが、残身には余韻が、生まれるのだろうと考えます。(これは物理的には表し難いものです)
伸び合いは、スタート位置に着いてまさに走り出そうとしているランナーの状態と同じと考えていいと思います。静止していますが、内面ではゴールを目指してもう動いている。
会はスタートライン
正直言ってこの域は、ただ単に弓を引いて離すだけの動作をしている早気では、絶対に味わえない境地なのです。
空手の形競技を見たことがありますか?
キレキレの形の演武で競う競技です。
離れは空手で繰り出される形に似ている。一つの形から次の形に移るときの溜めや、伸びやかな技の繰り出しを見習い、離れに取り入れたいものです。
迷いの無い、キレの良い、正確な離れ、というひとつの形を身につけていきたいと私は思います。
心地良い残身が得られれば、それによってもたらされるものもあります。
めざす的中の姿
次回は、会のままの残身についてを予定します。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしております。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。
1.はじめに
2.的中のための取り懸けについて(三つガケの場合)
3.的中について
4.離れについて
5.手を開いて(緩めて)離すことの弊害について(的中、上達を妨げるもの)
6.詰め合いについて
7ー1.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー2.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー3.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー4.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
8.伸び合いについて
9.会のままの残身について
10.会での勝手の手の内を考える
11.取り懸けの親指と中指のクロスをどう解くか
12.取り懸けで親指を押える位置は?
13.押し手の手の内を作るとき、角見の皮を巻き込む?
14.「離す」と「離れる」はどう違う?
15.胸弦の活用
16.弓道の離れとアーチェリーのリリースとの比較
17.正射必中に必要な幾何学的な必須条件
18.細かい話にはなりますが
19.弦捻りをかけると離れで弦枕が引っかからないか?
20.中りに重要なのは押し手ではないのか?
21.会では見えない動作がある?
22.残身まで開く力αはどれだけ大きくできるのか?
23.集中力、モチベーションを下げない練習方法ってないの?
24.弦捻りの中心は、矢軸か親指の弦枕か?
25.カケ解きはどのように作用させればいいの?
26.既製のカケは親指で選ぶ
27.弦捻りの誤解
28.勝手の中指で親指の腹を押し出すについて
37.的中を維持するには、お風呂でエクササイズという手がある
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