弓道においては的中が全てではありませんが、めざすは正射必中。中らない練習をいくらやっても上達はしません。的中は「的付け通りに矢を飛ばす」という実に単純な物理現象で生み出せます。
「的付け通りに矢を飛ばす」ために不可欠な物理的条件は以下となります。
①正しい的付けができていること。
②(矢が乗っている)押し手の親指と(弦を番えている)勝手の親指が、動かない状態(会のまま)で、離れの瞬間を迎えること。
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会〜離れ |
これらが実現できなければ、いくら精神論を語られても、綺麗な射形であっても、矢が的に中ることは絶対ありません。
逆に、これに至る過程にどんな射癖があってもこれらの条件が揃えば中る、早気などの射癖があっても治せなくなる厄介な条件でもあるわけです。
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離れの瞬間 |
それには離れをよく理解する必要があります。
その説明に入る前に、
整っていることが大前提である的付けの考え方について触れておきたいと思います。
より正確でブレのない的付けを行うためにはただ漠然と的全体を狙うのではなく、一の黒に狙いを置くことである。これを意識することで、精度の高い的付けをするように努力することが出来るようになるので、ぜひ実践してみて欲しい。(漠然と的を狙うことを勧める人もいるが、多少のズレがあっても気にせずに離すようになるので、私は勧めない)
狙いは、的付けのように物理的に位置を合わせるだけでは成立しない。
もう一つの狙いは体の中にあります。
弓を引き分けてきた力を、矢の軸線上に方向変換していくことです。
引き分けてきた力は上下左右の方向に分力を持っているので、会に入ってしばらくは的付けや勝手の収まりがフラフラとふらつきます。やじろべえの重りを突っついて振れている状態と同様です。
この状態で離すと、最後の振れの方向に矢が飛び、的を外すわけです。早気で離すタイミングが合わなくなった場合にはこうなっています。
この振れを止めようとすると、逆に筋力との共振が起こって振れが増大します。誰にでもこの経験はあると思います。
自分の両肘の張り(筋力)の方向を矢の軸線上に合わせることで振れは収束します。
この事を「矢の澄みを大切にせよ」と私は教わったわけですが、文学的表現は物理的に解釈できないと実践するのは難しいので、上記のように私は解釈しました。
矢の澄みを大切にせよ ≒ 張りの方向を矢の軸線上に合わせる
めざす的中の姿
自分の張りの方向を、どれだけ精度良く矢の軸線に合わせられるかが、もう一つの狙いであって、これができていなければ、安定した的中は出せないのです。次回は、離れについて を予定します。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。
1.はじめに
2.的中のための取り懸けについて(三つガケの場合)
3.的中について
4.離れについて
5.手を開いて(緩めて)離すことの弊害について(的中、上達を妨げるもの)
6.詰め合いについて
7ー1.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー2.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー3.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー4.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
8.伸び合いについて
9.会のままの残身について
10.会での勝手の手の内を考える
11.取り懸けの親指と中指のクロスをどう解くか
12.取り懸けで親指を押える位置は?
13.押し手の手の内を作るとき、角見の皮を巻き込む?
14.「離す」と「離れる」はどう違う?
15.胸弦の活用
16.弓道の離れとアーチェリーのリリースとの比較
17.正射必中に必要な幾何学的な必須条件
18.細かい話にはなりますが
19.弦捻りをかけると離れで弦枕が引っかからないか?
20.中りに重要なのは押し手ではないのか?
21.会では見えない動作がある?
22.残身まで開く力αはどれだけ大きくできるのか?
23.集中力、モチベーションを下げない練習方法ってないの?
24.弦捻りの中心は、矢軸か親指の弦枕か?
25.カケ解きはどのように作用させればいいの?
26.既製のカケは親指で選ぶ
27.弦捻りの誤解
28.勝手の中指で親指の腹を押し出すについて
37.的中を維持するには、お風呂でエクササイズという手がある
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