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2021年5月3日月曜日

◎弓道の的中(射技)の物理的考察~的中のための本当のねらいとは〜

38.的中のための本当のねらいとは


ねらいが整っていなければ、矢が的に中ることはありません。弓道でねらいと言うと、射法八節図解では第一から四のねらいで示されているもの、そして、的付けと口割りと考えるのが普通です。しかし、これらは表面的な形の上でのねらいであって、ねらいの核心ではありません。



<仮説29>

的中のための本当のねらいとは、離れ(張り)の方向を矢軸線にまっすぐに合わせること。


<検証>

結論から説明します。


会の中で、両腕の離れ(張り)の方向を、矢軸線方向に精度よく合わせ(≒矢の澄み)、残身へ向かってまっすぐに離れる努力をする(≒張合う)ことこそが、的中のための本当のねらいです。


的付けや口割りが整っていて矢が的に向いていても、まっすぐに離れが起きなければ、矢は的の方向には飛びません。これは、物理的に明らかです。


まっすぐに離れを起こすには、会からの張りの方向が、矢軸線にまっすぐに働いていることが必須です。


また、人が動作を起こすとき、その動作の目標をイメージできていなければ、その動作を自分の中にプログラムすることはできません。会の中で、会のままの位置からまっすぐに残身に向かって離れるイメージができていなければ、矢軸線方向にまっすぐな離れを生み出すことはできないのです。


つまり、本当のねらいは、的付けや口割り(表面的な形の上でのねらい)を整えて、的に向かって押して離すと言う表面的なものではないのです。



*弓道は中らない・・・となるのは*

例えば、

①離れが体から離れる方向になると、矢は的の後ろへ外れます。

②引き離れになった場合は、矢口が開いて的の前へはずれます。

③その時、矢が押し手から落ちながら離れると、的の前下の掃き矢になります。

④その時、矢口が開かなければ的の上に外れます。

⑤上方向に離れると、矢は的の下に外れます。

⑥下方向に離れると、矢は的の上に外れます。


会に入った時に、どんなに正確に的付けが整っていても、離れの瞬間に①〜⑥のように勝手がズレると、最後にズレた方向に矢は飛んでいきます。だから、弓道は中らないのです。


射法八節を習得できて、次の段階に進むためには、会で的付けや口割りを整えて離すだけでは的中できないこと、そして、的中のためには、整えなければならない物理的条件があることを、よく理解しておく必要があります。

3.的中について

17.正射必中に必要な幾何学的な必須条件

なぜなら、中らない練習をいくら繰り返しても上手くはなれないからです。



*押しばかりを重視した昔からの既成概念*

押しばかりを重視した離れでは、このような残身になってしまいます。

昔は、これでも、押しの伸びと胸割りに勢いがあれば、文句は言われなかったわけですが、最近では、大離れが良いと注文がつくようになってきていています。


このように、勝手側に勢いが出ないのは、離れの時に、勝手側の動作のねらいが定まっていないことが原因なのです。昔からの既成概念では、押し中心で、勝手側のねらいなど意識することすらないのですから、このようになるのはあたりまえでした。



*大離れを実現するには、ねらいの考え方を変える必要がある*

大離れを実現するねらいとは、矢軸線方向の張りの行き先、押しのねらいが前の的であるように、勝手側は前の的の真反対に後ろの的があるイメージをして、この後ろの的を勝手側のねらいにし、その両方のねらいの真ん中に、自分のありたい残身の姿をイメージしながら、残身をねらって離れるよう努力することです。


つまり、会では、前の的と後ろの的の2つの的をねらっていくことになります。

それが、大離れに導くためのねらいになります。的中と残身は、その結果として実現されます。ねらって実現できた残身は、取って付けた残身とはまったく違う心地良いものとなるでしょう。




*弦捻りの間違いには気をつけよう*

ここで、補足しておきたいと思います。

かけほどきのための弦捻りは、

7ー4.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~

の中で、

肘から先で捻りをかけることで、勝手の親指を中心としたブレのない動きで懸け解きが実現できるわけです。(手首で捻ると、親指の先は手首を中心にブレを生むことになるのでやらないでください)と説明しました。

手首で折るように捻るとこのような、手先の離れになってしまいますので、特に気をつけてください。




<まとめ>

的付けや口割りは、まだ、詰め会いの一部なのだと考えることで、的中のための本当のねらいを見出してください。


的中のための本当のねらいとは、張りの方向を矢軸線に合わせていくことと離れの目標となる残身をイメージし、そこに向かって離れる努力をすることです。


本当のねらいと向き合うことで、心地良い残身と的中が得られることでしょう。(矢所がまとまることが大事です)


ぜひ、チャレンジしてみてください。

まずは、イメージトレーニングから始めましょう。



P.S.

早気の方へ、会は、引き分けのゴールではありません。弓道の射技の本質を味わうためのスタートラインなのです。実にもったいない離し(話し)です。そこから、やるべきことがあることを、自分の勝手に教えてあげてください。



次回は、(未定)を予定します。

的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。

解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。



がんばれ!

 


弓道の的中(射技)の物理的考察
もくじ

0.弓道の再開


1.はじめに
2.的中のための取り懸けについて(三つガケの場合)
3.的中について
4.離れについて
5.手を開いて(緩めて)離すことの弊害について(的中、上達を妨げるもの)
6.詰め合いについて
7ー1.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー2.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー3.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
7ー4.張り合いについて~取り懸けを解いて離れる方法~
8.伸び合いについて
9.会のままの残身について
10.会での勝手の手の内を考える

11.取り懸けの親指と中指のクロスをどう解くか
12.取り懸けで親指を押える位置は?
13.押し手の手の内を作るとき、角見の皮を巻き込む?
14.「離す」と「離れる」はどう違う?
15.胸弦の活用
16.弓道の離れとアーチェリーのリリースとの比較
17.正射必中に必要な幾何学的な必須条件
18.細かい話にはなりますが
19.弦捻りをかけると離れで弦枕が引っかからないか?
20.中りに重要なのは押し手ではないのか?

21.会では見えない動作がある?
22.残身まで開く力αはどれだけ大きくできるのか?
23.集中力、モチベーションを下げない練習方法ってないの?
24.弦捻りの中心は、矢軸か親指の弦枕か?
25.カケ解きはどのように作用させればいいの?
26.既製のカケは親指で選ぶ
27.弦捻りの誤解
28.勝手の中指で親指の腹を押し出すについて

29.弓返りに大切なのは弓の捻り

30.押し肘の回内はなぜ必要か?


31.夏の暑さから弓を守るには

32.的中率を上げるためにやれること

33.かけがえのないものを受け継ぐには

34.かけほどきを身につけよう

35.(続)夏の暑さから弓を守るには

36.両肘の張りと弓の裏反りは似ている?

37.的中を維持するには、お風呂でエクササイズという手がある

38.的中のための本当のねらいとは

39.かけほどきの力の反作用も考えてみよう

40.的中は矢から学べ


41.「矢に学ぶ」①矢を分ける

42.「矢に学ぶ」②矢筋にのせる

43.「矢に学ぶ」③矢押し

44.「矢に学ぶ」④矢引き

45.「矢に学ぶ」⑤矢の離れ口

46.「矢に学ぶ」⑥矢妻をとる

47.「矢に学ぶ」⑦矢になる

48.スランプの原因を物理的に考察する

49.取り懸けをミクロに考察してみる

50.取り懸けをミクロに考察してみる(大切な補足編)


51.「離れ」の瞬間を考察する


がんばれ!

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