46.「矢に学ぶ」⑥矢妻をとる
今回「矢に学ぶ」という考え方を読み返し、射の最終局面である会から離れの中で努力しなければならないことを再認識することができています。
今回もできるだけ解りやすく物理的に解説していければと思います。
「矢に学ぶ」
⑥矢妻をとる(今回)
⑦矢になる
昔の考え方なので、今では違和感があるところもありますが、今回も原文のまま紹介したいと思います。
「矢に学ぶ」(原文)
S59.10.25
⑥矢妻をとる
- 「矢妻」ということは、古流に「詰め合とて、離れに弓を押ゆるなり」と口伝しています。つまり、押手の手の裏の離れ口であります。だからこれは押手だけの技と考えますが「左右相応の原理」から矢妻は左右が相応しないと完璧な働きができません。
- 会の最終段階、つまり離れの寸前は前に記述しましたように「弓圧は角見一点で受け止め」「弦圧は弦枕の一点に集中」します。つまり左右とも親指根(第二関節)に、弓弦の圧力がかかってきます。だから左右の両親指の根が離れの一瞬にどう働いてくれているかということが決定的な問題だということがわかると思います。
- この身体の先端部にある両親指根の働きを私は次のように教えています。
押手の親指根は「伸ばして、押える」・・・的芯に向って親指の爪先を突き込む気迫で伸ばしながら、矢が離れた瞬間に弓がハネ上がらないよう親指根で弓を押え込む。
勝手の親指根は「抱えてハジく」・・・勝手に「肘がかえ」ができれば、右手の先端にある親指は自然に下弦を引き上げる感覚(かかえ)になり、押手の伸びに対応して親指がハジくと瞬間に弦はほどける。
- このとき注意することは、押手の親指が働いている(伸び)うちに勝手の親指を働かせる(ハジく)ことです。これを昔は「阿吽の呼吸」とか「オウム(鳥)の離れ」とか言っていました。つまり「押手の働きにつれて勝手が働く」それが正しい相応の原理です。
- 参考のために申し添えますが。「左右は必ず相応する」ということです。例えば押手の手の裏が「堅い」ときは、必ず勝手は「弦にしがらんで」弦もつれします。反対に勝手で方引きしますと、必ず押手は浮き上がってブラつくもので、残身を見たらすぐ均衡が破れているとわかります。
少し難しい表現となっているので解りにくいのですが、ここでのポイントは以下の3点のように思います。
- 矢妻をとるとは押し手の技ですが、押し手の手の内の効かせるだけではなく、左右を相応させて働かせることが必要。
- 両親指の根(角見と弦枕)の働かせ方について
押し手の親指先は的芯に向かって突き込むイメージで、離れた瞬間跳ね上がらないようにする。(剛弓を引くには必須でした)
「勝手の親指根は抱えてハジく」は、
・3つの指を薄くし親指を中指で押すようにする。
・肘から先で弦捻りをかけ、ハジける(取り懸けが解ける)臨界状態を創る。
解りやすく物理的に表現すると、弦を捻りながら弦枕で弦を前に送り出すようになればいいのです。
- 左右は必ず相応する。(ここが非常に重要であることに私たちは気付かなければなりません)・・・押し手の親指と勝手の親指は全く同じように働かせれば良いということです。
押し手は、角見に弓力を感じながら的に親指をまっすぐに伸ばしていく。
勝手は、弦枕(押し手の角見とほぼ同じ位置)で弓力を感じながら親指をまっすぐに伸ばしていく。
簡単に言えば、勝手の親指も押し手の親指と同じように的に向かってまっすぐに伸ばしていけばいいだけということになるのです。(ここをアレコレと別々に教える人が多いので、逆に迷いを与える結果につながってしまうようです)
実際には、
押し手の親指は会では弓力で曲がっているが、力としては的に向かってまっすぐに伸ばしている。
離れの瞬間、勝手の親指も的に向かってまっすぐ伸びている。
<まとめ>
「左右相応」を意識すること。
押し手、勝手それぞれ機能は違うが動きは同様であることに気付くことは、安定した的中を実現するためには大切なのです。
次回は、「矢に学ぶ」⑦矢になる を予定します。
的中と仲良しになるためにまたのお越しをお待ちしています。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。