61.会から離れの物理的考察を俯瞰して観る
「弓道の的中(射技)の物理的考察」は、ついに60項目を超えました。
この節目にこれまでの断片的な考察から、射技で最も重要な「会から離れ」について、理解しやすいように、まとめて観れるようにしておきたいと思います。
最初に立てた仮説は、こうでした。
- 的中に最も重要なのは、「馬手(勝手)の手の内とその働かせ方」である。
- 弓手(押し手)はさほど重要ではない。的付けどおりに真っ直ぐに押せてさえすれば充分である。
- そもそも、人は同時に左右別々の動きをするのは苦手である。勝手をうまく働かせれば、同期した反射運動として押し手も働く。
- 的(押し手)ばかりにとらわれず、正しい方法で勝手を働かせることが、正射必中への道である。
そこで、実際に離れを行っている勝手(馬手)の働きに注目して、考察を行なってきました。(弓道界ではタブーなことをやってきたのかも知れませんが・・・)
これまでの考察結果の「会から離れ」についてのまとめです。
58.的中率をさらに上げるためにやれること〜(アップデート)
上図のように、
- 会では離れを導く作用を働かせ続けることが大切です。
- 取り懸け内の力のかけ方(ベクトル)
- 右肘の張り(ベクトル)
- これらが離れを生むのです。
(補足)
離れが硬くなってしまう場合は力み過ぎが考えられます。力をかける方向(ベクトル)を意識しましょう。
会から離れの上半身の動きを支えるため、両足のひかがみを張り続けることも忘れないでください。両肘と両ひかがみを結ぶ線の中心は丹田で交差して繋がって、物理的に安定した状態を作ります。
教え魔な先生のレポートにあったイメージ図
(早気の人は、この射技において最も大切な会での目に見えない動作をやらずに、自ら放棄してしまっていることを認識してください)
離れにおいて、右肘の張りを働かせることができれば、取り懸けを解く手の指の動きを同時に働かせることにもなります。
なぜなら、
手の指を動かす筋肉は、上腕骨の肘の部分に付いているからです。身体の構造がそうなっているのです。(下図)
さらに、右肘の張りを働かせるということは、
上腕は両肩の線より後ろには回らない(骨格構造上)ので、肘が開くためには、肩関節のある肩甲骨についた背筋(僧帽筋)を働かせることが必須です。(36.両肘の張りと弓の裏反りは似ている?参照)
そのイメージが、「両肩の線を矢に近づける」(弓道教本第一巻 射法八節図解)に繋がります。
教え魔な先生のレポートにあったイメージ図
動作を実現するには、まず、その動作のイメージと筋肉の働きを頭の中に描くことが大切です。
(27.弦捻りの誤解、58.的中率をさらに上げるためにやれること〜(アップデート)も参照してください)
迷った時、スランプに陥った時、
私がまず立ち返るのは「9.会のままの残身について」です。訳のわからなくなった状態を原点位置に戻してくれるように思います。そこから、今回まとめた内容を1つづつ復習することで的中との仲を取り戻せるのです。
次回は、未定 を予定します。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。