51.「離れ」の瞬間を考察する
離すではなく、なぜ「離れ」なのか?
弓道を始めた人は、必ず持つ疑問だと思います。
そして、「離れ」とは何なのかを知りたいと思っている筈(はず)です。
矢を放つために、引き分けて弦を離す。
それを繰り返すことで身についてしまう反射的な運動だからそう呼ぶのだと、思っている人もいるかもしれませんし、的中だけを求めるには反射運動であっても良いのかもしれません。
しかし、
大切に育ててきた一射の結果を単なる反射運動で決める、で良いのでしょうか?
矢を放つという動作は同じなのですが、「離れ」という現象を起こす方が、実に心地よいと思います。
<仮説>
「離れ」という現象では、その瞬間、勝手は動かない。
<検証>
今回は「離れ」という現象を実証します。
離れという現象がどのように起こっているのか、離れの瞬間を真下からスロー動画で撮影しました。
まず、
取り懸けが解け始めて矢が消えるまでのコマ画像で解説します。
①取り懸けが解け始めた瞬間
親指(弽帽子)と中指が滑り始めた瞬間です。
・親指を押さえていた中指は、懸け解きの力で滑り出している。
・親指は、弦からの弓力を受けて、前へ弾き出されている。
②取り懸けが解け、弦が親指を弾き、矢が飛び出した瞬間
・弦は中指と親指の間を抜けていく。
・矢は弽帽子の先端を過ぎている。
③矢が飛び出た直後とその時の前からの写真
・中指は親指を外れた後、下方向(親指を押さえていた方向)へ移動している。
・手を開いて離していないということがはっきり解る。
④弦に弾かれた親指が、戻り始める
・親指は弦を押す方向に力を効かせているので、戻り始めている。
⑤親指が閉じる
・手は開くのではなく、閉じる。
・弓力から解放されるので、勝手が後方へ開き始める。
では、動画を見てください。
スローで撮った動画をさらに遅く再生しているので、コマ送りになっています。
離れの瞬間をスマホでスロー動画を撮影し再生スピードを1/64にした
離れ(取り懸けが解ける)が始まり矢が飛び出るまで、勝手も押し手も会の位置からは動かない。手を開く動作で離しているわけではなく、会のままの位置で弦が親指(弽帽子)を弾いて親指の先端を通過して出ていく、だから矢は狙い通りに飛んで行く、そのことがよくわかります。(弦が耳に当たらない証拠でもあります)
取り懸けを解いて離れる場合、離す動作をしないので、離れの直前〜瞬間まで、勝手の位置は動いていないことを証明しています。
このように、懸け解きがもたらす「離れ」という現象は、理にかなっているのです。
また、
勝手も押し手も会の位置からは動かないことを実現するには、その位置に留めようとしては、留めようとする力が方々に働くので逆効果になります。
勝手も押し手も矢軸方向に力を効かせ続けることが、最も簡単な方法だということを理解してください。
<まとめ>
「離れ」という現象では、その瞬間、勝手の位置は動きません。
だから、ねらい通りに矢が飛ぶ=的中、という結果がもたらされるのです。
「離れ」を起こすには、懸け解きを身につけることが、最も簡単な方法です。
以下の記事も参考にしてください。
3.的中について
4.離れについて
14.「離す」と「離れる」はどう違う?
25.カケ解きはどのように作用させればいいの?
34.かけほどきを身につけよう
39.かけほどきの力の反作用も考えてみよう
49.取り懸けをミクロに考察してみる
50.取り懸けをミクロに考察してみる(大切な補足編)
今は、スマホで写真、動画、スロー動画などを色々な方向から撮影し、目に見えない瞬間まで可視化し、射技の評価ができます。活用しないのは実にもったいない離し(話し)だと思います。
以前、的中に悩む方からスロー動画が届いたことがあります。
その動画には、離れる直前に、少し矢筈が上後ろ方向へ動いた後に、離れているという実際に起きている事実が捉えられていました。離そうと動作することからくるもの、”引き離れ”または”振り解き”という動作です。
このように、会での力の均衡を崩すことで離すきっかけとする場合が多いのですが、自分の悪いところを目のあたりにすることは、上達のためにはとても有益です。
次回は、的中率をさらに上げるためにやれることを予定します。
的中と仲良しになるために、またのお越しをお待ちしています。
解りにくいところがあれば、遠慮なくご質問ください。
来年も、がんばれ!&